出願ルート
外国出願の流れとしては、通常は、パリルート、PCTルートの2種類から選択されます。いずれも、最初に日本出願を行い、その日本出願から1年以内に次のアクションを起こすことが必要です。
外国出願の2つの出願ルートについて概略的にみると、パリルートは出願する国が確定していて(=出願しない国が決まっている)、初期の段階での費用負担が可能である場合に適しています。出願全体での費用はPCTルートよりも低額になります。他方、出願する国の選択をできるだけ先延ばしにし、かつ、多額の費用が発生する翻訳作業もできるだけ先延ばしにする場合にはPCTルートが適しています。但し、PCTルートの場合の総費用はパリルートよりも高額になります。
パリルート
最初の日本出願から1年以内に権利取得希望国に特許出願を行います。「1年以内」に適切な出願を行えば、「日本出願」の後に、対象発明が他者によって開示されたり、他社が似たような出願を行っていたとしても勝つことができます。各国出願時には、各国で指定された言語への翻訳が必要になります。手続は各国の特許庁に対して行うので、現地代理人の指定が必要です(=現地代理人費用が発生します)。このように、日本出願から1年以内に発生する費用が比較的高額になります。出願後に、事業展開の都合上で出願が不要になったり、先行文献が見つかったりすると、出願時の費用が無駄になることもあります。後述のPCTルートに比べると、「PCT出願」をしない分だけ、総費用は安くなります。
PCT(国際特許出願)ルート
最初の日本出願から1年以内に「PCT出願(国際特許出願)」を行います。そして、最初の日本出願から30ヶ月(2年半)以内に、権利取得希望国に「移行手続」を行います。パリルートと同様に、「日本出願」より後に、対象発明が他者によって開示されたり、他社が似たような出願を行っていたとしても勝つことができます。
「PCT出願」時には日本語で手続ができ、権利取得希望国を特定しなくて良いのが特徴です。そのため、翻訳文の作成や、現地代理人の指定は不要であり、初期費用が低額です。また、「PCT」への全加盟国(140ヶ国以上)に対して特許権取得の可能性を残しているので、競合他社に対する牽制力を維持することができます。PCT出願をすると、「国際調査報告」が通知されるので、先行技術の存在を客観的に判断することができ、以降の手続を行うか否か(つまり、費用をかけるか否か)の判断材料にすることができます。最初の日本出願から30ヶ月(2年半)以内に、権利取得希望国への移行手続が必要であり、このときに、権利取得国を確定し、翻訳文を作成し、現地代理人を指定します。その後は、各国において特許の審査が行われて審査にパスすれば権利が付与されます。パリルートよりも長い期間の検討時間と権利留保期間が確保されますが、PCT出願を行う分だけ、総費用は嵩みます。ただし、PCT出願経由の場合には各国での費用が割引になることはあります。